計画した部屋では、
どのくらいの能力の空調器が必要になるだろう?
空調室外機は、何台になるだろう?
と、お悩みになったことがあると思います。
計画時に想定できると、その後の計画がぐっと楽になります。
今回は、計画時に使えるポイントをご紹介します。
(詳細の負荷計算を必ず実施して下さい。)
(今回ご紹介するのは、パッケージ型空調機を使用することを想定しています。セントラル方式等は対象としていません。)
【ポイント1】部屋の面積から空調負荷の目安を設定する
部屋の面積と用途から、大まかな空調負荷を計算し必要な空調機のあたりをつけます。
部屋の用途別空調負荷の目安(HASS109改訂案より引用)
事務所
事務室 最上階:(冷房)140〜170 kcal/m2・h
(暖房) 140 kcal/m2・h
事務室 中間階:(冷房)110〜150 kcal/m2・h
(暖房) 140 kcal/m2・h
会議室 最上階:(冷房) 240 kcal/m2・h
(暖房) 240 kcal/m2・h
会議室 中間階:(冷房) 220 kcal/m2・h
(暖房) 210 kcal/m2・h
応接室 最上階:(冷房) 170kcal/m2・h
(暖房) 180 kcal/m2・h
応接室 中間階:(冷房) 150 kcal/m2・h
(暖房) 160 kcal/m2・h
銀行
営業室 客溜:(冷房) 220 kcal/m2・h
(暖房) 210 kcal/m2・h
応接室:(冷房) 180 kcal/m2・h
(暖房) 150 kcal/m2・h
女子ロッカー室:(冷房) 160 kcal/m2・h
(暖房) 140 kcal/m2・h
スーパーマーケット
食料品:(冷房) 230 kcal/m2・h
(暖房) 200 kcal/m2・h
衣料品:(冷房) 220 kcal/m2・h
(暖房) 170 kcal/m2・h
この数値を使って概算負荷をおさえます。
安全率をかけることを忘れないこともポイントの一つです。
私は、10〜20%余裕を見るようにしています。
最終的には、設備設計者による詳細負荷計算を実施して容量を決定します。
他用途の部屋の目安負荷については、下のリンクを参照下さい。
意匠設計必見! 単位床面積あたりの冷暖房負荷の概算値 空調設備
【ポイント2】部屋の特性から室内機のタイプを設定する
部屋の特性に合わせて室内機のタイプを設定します。
天井カセット型(4方向)
事務所や店舗で良く使われていて、商業施設等で最もよく使用されるタイプです。
本体が天井裏に隠れるので、スッキリとした空間となります。
風も4方向に吹き出されるので、効率よく空気を循環させることができます。
天井カセット型(2方向)
天井カセット(4方向)と概ね同じですが、2方向に吹き出されるタイプです。
奥行きが狭い部屋(長方形の部屋)に最適です。
天吊り型
天井カセット型が、機械が天井裏に隠れるのに対して、本体が室内に露出するタイプです。
天井カセット型の場合、天井の開口が必要なのに対して、天吊り型は不要なので比較的コストがかからないタイプです。
機械が露出している為、天井カセット型よりもメンテナンス性が良いのも特徴です。
主に学校の教室などの意匠性よりもメンテナンス性を重視する部屋に使用されます。
壁掛け型
名称の通り、壁に設置するタイプです。
家庭用から業務用まで使用できる程、幅広い空調能力のラインナップがあるのが特徴です。
メンテナンス性や更新が容易であるの点や価格が安いことが特徴で、戸建住宅や賃貸住宅、意匠は問わないが空調したい部屋へ採用されます。
床置き型
床に設置されるタイプです。
比較的大きな能力をもつタイプが多く、大空間の工場や倉庫に採用されることが多いです。
吹き出し口にダクトを付けることも可能です。
床に設置されるので、床のスペースが必要となります。
ダクト吹き出し型
空調機自体は天井裏に隠蔽されて、ダクトにより繋がった吸い込み口と吹き出し口のみが、天井面に見えるタイプです。
最も意匠性に優れるタイプです。
しかし、ダクトが必要な分、最もコストがかかるタイプの一つです。
ロビー等の意匠性を重視した空間によく使用されます。
食品工場等では、吹き出し口に布製のダクトを設置して使用することもできます。
布製のダクトから空気が吹き出すことで、ゴミを除去する効果と、空気が優しく感じるようにできます。
【ポイント3】室外機スペースから空調機のタイプを設定する
室外機スペースが多く確保されている場合は、
シングル型(1対1)(室内機1台に対して室外機1台)とすることが可能ですが、
室外機スペースが限られる場合は、
マルチ型(室外機1台に対して室内機複数台)とする必要があります。
マルチ型の場合、1台の室外機が故障すると対応する室内機が使用できなくなりますが、シングルの場合個別対応が可能です。
部屋の使用状況に合わせて系統を分けるのがポイントです。
さいごに
以上が空調設備のプランニング法の一つの紹介でした。
これからの建築設計には、「エネルギーマネジメント」をも考えることが
設計の付加価値になると考えています。
住宅系の建物の場合、
空調設備が占める建物エネルギー消費量が、
暖房:22.4% 冷房:2.2%を占めています。
オフィス系の場合は、
空調設備が占める建物エネルギー消費量は
「空調(熱源+熱搬送):全体の43.1%」と大きな割合を占めているのが実情です。
エネルギー消費量が多いということは、光熱費がかかるということです。
上手な設備計画が、
お客様のメリットになりますし、設計者の付加価値となります。
(エネルギーマネジメントには、大手は参入していますが中小企業ではまだまだ少ない分野です。)
是非、設計中の空調設備について確認してみて下さい。
★☆☆☆彡
最後まで閲覧頂きまして、
ありがとうございました。m(_ _)m
この記事を書いた人
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このブログについて 建築士の挑戦 - 『建築士 ✕(かける)』
★「職人」から「建築士」へ
施工現場と設計現場へ そして事務所を開設した異色の経歴を持つ建築士。
2018年10月に設計事務所「 Samurai-architect(サムライ-アーキテクト)」を開設。
退職〜開業までの記録を綴った 「開業の記録シリーズ」を公開中。
実務以外のこと(主に遊び)は、 「建築士× (カケル)」にて。
ブログ記事の更新はsamurai architectの「 Facebookページ」にてお知らせしています。
計画時のポイントシリーズ
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