住宅のエアコン選定方法!!
エアコンの暖房負荷・冷房負荷計算する方法
今回は、最近の猛暑により注目されている
住宅におけるエアコンの選定方法を紹介します。
知っていると得する情報も合わせて記載しますので、
設計中の方や、エアコン購入を検討している方に参考にして頂けたら
嬉しいです。
少しの手間で、「イニシャルコスト」「ランニングコスト」がお得になります。
是非試してみて下さい。
↓ 事務室等の建物の負荷計算に関する記事はコチラ ↓
- 住宅のエアコン選定方法!!
- エアコンカタログの見方
- 数値の意味
- APF(エアコンの効率)からみる上手な選定方法
- 暖房負荷・冷房負荷とエアコン要領算定
- 暖房負荷にによる「イニシャルコスト」「ランニングコスト」の比較
- さいごに
エアコンカタログの見方
エアコン購入を検討してる方は、
まず、電気量販店に行く方、カタログを見る方が多いと思います。
今回は、壁掛け型のルームエアコンを例にします。
カタログの例
これは、DAIKINのカタログです。
他のメーカ―も同様に考えていください。
☆6帖程度用のエアコンを見てみましょう。
様々な数値が掲載されていて、分かりずらいですね。
数値の意味
エアコン選定用には、4点をチェックします。
1・定格運転
暖房定格能力:2.2kW
冷房定格能力:2.2kW
2・最大能力
暖房最大能力:4.6kW
冷房最大能力:2.8kW
暖房能力の方が、冷房能力よりも最大能力が大きいことがわかります。
3・最小能力
暖房最小能力:0.7kW
冷房最小能力:0.6kW
4・通年エネルギー消費能力 6.3
通年エネルギー消費能力とは、冷暖房合計の年間効率のことで
簡単に表すと、車の燃費のようなものです。
「1」の電気エネルギーに対して、何倍の働きをするかを表す数値です。
数字が大きいほど、効率が良いエアコンであることを表しています。
POINT1 お得情報
カタログに記載されている畳数は、
カタログの注記にあるようにあくまで目安です。
カタログの畳数算定は、
『木造平屋建て 南向きの和室 無断熱の居室』がモデルになっています。
畳数の目安からエアコンを選定すると、
確実にオーバースペックのエアコンになります。
実情にあうエアコンを選定するには、負荷計算が必須です。
APF(エアコンの効率)からみる上手な選定方法
APF(エアコンの効率)は、
車の燃費と同様に、その時の状況によって大きく変動します。
11.59㎡(7帖)の部屋に6帖用エアコンを設置した場合
APF:3.2
11.59㎡(7帖)の部屋に14帖用エアコンを設置した場合
APF:2.4
部屋に対して大きなエアコンを設置すると、APFが下がることがわかります。
すなわち、畳数目安を参考にして能力を決めてしまうと、
必要以上のエアコンが選定されてしまうので、
機種代が高くなる他、エアコンの効率が下がります。
実情に合わせて負荷計算をしてエアコンを選定することが、
「イニシャルコスト」「ランニングコスト」を抑えるポイントです。
一般的に、定格能力の4〜6割程度の運転が最も効率が良いです。
暖房負荷・冷房負荷とエアコン要領算定
暖房負荷の算定
外壁の熱貫流率:0.4W/㎡・K
内壁の熱貫流率:1.9W/㎡・K
天井の熱貫流率:0.2W/㎡・K
窓の熱熱貫流率:2.0W/㎡・K
これらの数値は、実際の構成に合わせて下さい。
上のモデルで計算します。
外気への熱損失を求める
式: 壁の面積×熱貫流率×温度差
南 面:(8.7ー3.3)㎡ × 0.4W/㎡・K × 20℃ = 43.2W
南 窓: 3.3㎡ × 2.0W/㎡・K × 20℃ =132.0W
西 面: 6.5㎡ × 0.2W/㎡・K × 20℃ = 52.0W
2階天井: 10㎡ × 0.2W/㎡・K × 20℃ = 40.0W
非暖房室への熱損失を求める
東内壁: 6.5㎡ × 1.9W/㎡・K × 10℃=123.5W
北内壁: 8.7㎡ × 1.9W/㎡・K × 10℃=165.3W
2階床: 10.0㎡ × 1.9W/㎡・K × 10℃=190.0W
換気による熱損失を求める
24㎥ × 0.5回 × 0.35W/㎡・K × 20℃ = 84.0W
熱損失集計
外 気:267.2W
非暖房室:478.8W
換 気: 84W
総熱損失:830.0W
内部発熱量:100W(最低1人として)
総熱損失ー内部発熱:730.0W
日射取得熱を求める
日射取得熱:330W/㎡×3.3㎡×60%=653.4W
POINT2
1・断熱性能が高い場合、
外壁の断熱性能よりも、非暖房室の熱損失が大きいのが分かります。
高断熱化住宅では、全館空調の方が効率が良いことがわかります。
2・断熱性能が良い場合、
日射熱取得がある昼間においては、暖房不要とすることができます。
冷房負荷の算定
同じように冷房負荷について計算します。
外気への熱損失を求める
南 面:(8.7ー3.3)㎡ × 0.4W/㎡・K × 8℃ = 17.3W
南 窓: 3.3㎡ × 2.0W/㎡・K × 8℃ = 52.8W
西 面: 6.5㎡ × 0.2W/㎡・K × 8℃ = 20.8W
2階天井: 10㎡ × 0.2W/㎡・K × 33℃ = 66.0W
非暖房室への熱損失を求める
東内壁: 6.5㎡ × 1.9W/㎡・K × 8℃=98.8W
北内壁: 8.7㎡ × 1.9W/㎡・K × 8℃=132.2W
2階床: 10.0㎡ × 1.9W/㎡・K × 8℃=152.0W
換気による熱損失を求める
24㎥ × 0.5回 × 0.35W/㎡・K × 8℃ = 33.6W
熱損失集計
外 気:156.9W
非暖房室:383.0W
換 気: 33.6W
総熱損失:573.5W
内部発熱量:100W(最低1人として)
総熱損失+内部発熱:673.5W
日射取得熱を求める
日射取得熱:330W/㎡×3.3㎡×60%=653.4W(庇無の場合)
庇により8割カットした場合:130.68W
↓庇の設定方法はこちらです↓
顕熱負荷(庇無し):1326.9W
顕熱負荷(庇有り): 804.2W
求めた数値を顕熱比=0.7で割る
顕熱負荷(庇無し):1,896W
顕熱負荷(庇有り):1,149W
POINT3
1・暖房能力よりも冷房能力の方が能力が必要。
2・エアコンの暖房・冷房の差から、
1台のエアコンで冷房と暖房を賄うと費用がかかる。
暖房・冷房共に、余裕率1.3程度を加算するようにして下さい。
暖房負荷にによる「イニシャルコスト」「ランニングコスト」の比較
断熱性能によって、どの程度費用が変わるかの試算表です。
「40kwh/年」と「80kwh/年」で、比較をします。
試算によると「イニシャルコスト」「ランニングコスト」合わせて
「270万円」の差がでることが分かります。
エアコンはいずれ壊れます。
更新のコストも考慮し、台数は極力が少ないプランのほうがお得です。
これが「本当はエコハウスの方が安い!!」と言われる理由の一つです!
さいごに
1・実情に合わせて負荷計算して、
最適なエアコンを選定することが
「イニシャルコスト」「ランニングコスト」を抑えるポイントです。
2・断熱性能があがれば、全館空調の方が効率が良いです。
3・エアコンは、冷房用と暖房用と別々に分けたほうが効率が良いです。
設計中の方や、エアコン購入を検討している方は、
是非検討してみて下さい。
本ブログでは、設備設計やってみようシリーズを立ち上げました。
随時記事を増やしていきますので、お時間があれば合わせてご覧下さい。
★☆☆☆彡
最後まで閲覧頂きまして、
ありがとうございました。m(_ _)m
この記事を書いた人
↓「まるたか」について詳しくはこちらをご覧下さい。
このブログについて 建築士の挑戦 - 『建築士 ✕(かける)』
★「職人」から「建築士」へ
施工現場と設計現場へ そして事務所を開設した異色の経歴を持つ建築士。
2018年10月に設計事務所「 Samurai-architect(サムライ-アーキテクト)」を開設。
退職〜開業までの記録を綴った 「開業の記録シリーズ」を公開中。
実務以外のこと(主に遊び)は、 「建築士× (カケル)」にて。
ブログ記事の更新はsamurai architectの「 Facebookページ」にてお知らせしています。