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【設備設計実際にやってみようシリーズ】排水配菅の実施設計(1/2)(全2回)

【意匠設計者向け 設備設計やってみようシリーズ】

排水配菅の実施設計(1/2)(全2回)

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【シリーズの内容】

【第1回】 汚水・雑排水管の計画 ←←

【第2回】 雨水排水管の計画

 

今回は、建物の排水配管の設計を行っていきます。 

 (ネタばれしちゃうので、同業の仲間からはぶっとばされそうですが、公開しちゃいます。)

 

排水管は、他の給水管や換気ダクトといった設備よりも取り掛かり易いです。

 

まずは、すでに竣工した現場で試してみるとよいです。

是非挑戦してみて下さい。

注意事項

排水配管に関しては管轄の諸官庁、下水道課等で独自の基準や規定が定められていることがあります。

また、事前に協議が必要な場合がありますので計画前と計画後に必ず、諸官庁への調査・協議を実施することをオススメします。私は何度も足を運んでいます。役所協議はタダですから!

 

【1】事前準備

【事前準備】排水配管のおさらい

排水配管の目的

 まず、排水配管についてをおさらいしましょう。

 

www.arch-memo.com

 建物内の生活排水を下水道管や、浄化槽まで排水する為の配管です。

人間が衛星的に生活する上で欠かすことができないインフラ設備です。

 

建物と配管の縁を切る大切な役割「トラップ」

各機器には、「トラップ」とよばれる封水装置が付いています。

その「トラップ」によって、配管内の虫や臭気が室内に上がらないようになっているわけです。

www.arch-memo.com

排水の種類

敷地内からの排水は、以下のように区分されます。

汚    水-------大便器・小便器・汚物流し等からの排水

雑排水-------汚水以外の排水器具からの排水

雨    水-------屋根や敷地内の降雨水

特殊排水----下水道へ直接放流できない有害・有毒な成分を含む排水

     (厨房の排水や、ガソリンが含まれる排水等)

 

 

【2】実際に設計してみよう!

 

それでは、本題に戻ります。

「設備設計基準」をお持ちの方は、ご準備をお願いします。

設備設計基準とは”この本”です。

建築設備設計基準 平成27年版

建築設備設計基準 平成27年版

 

 

【建物モデル】

建物モデルとして次のような建物を想定します。

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地方に立つ平屋のクリニック(診療所)です。

(ツッコミどころ満載の平面プランですがあしからず・・・)

基本データ

・前面道路に水道本管・公共下水道(生活排水・雨水)・都市ガス完備

・従業員数:5名

・公共下水配管は、「生活排水」と「雨水配管」。

・行政より、分流式で計画するよう指示あり。

 

 

 排水管の計画

【手順】敷地の調査

まずは、敷地の調査を行います。

 

代表的な調査項目として

1・公共下水道へ放流できるか。また、流量の規制はあるか。浄化槽が必要か。

2・下水道配管へ流せる排水の区分はあるか。

3・敷地内に公設桝があるか。ある場合深さはGL-〇cmか。

4・排水は分流式か合流式か指導があるか。

 等が挙げられます。

 

今回モデルとした建物から

1・公共下水道有、流量制限なし

2・下水道(生活排水用・雨水排水)

3・敷地内に公設桝有。接続口はGL-900mm。

4・排水は分流式で計画

 と整理することができました。

 

これらのことは、管轄の下水道管理課等で簡単に調べることができます。

 

 

【手順】 各器具の器具排水負荷単位の設定(設備設計基準P593)

 まずは、「設備設計基準:P594 表5-1」を参照しながら、各器具の排水負荷を整理していきます。

(併記されている、最小配管口径(標準的に付属されるトラップの口径)も合わせて確認します。)

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上の図のように整理することができました。 

 

 

【手順】 区間ごとの器具排水負荷単位の累計を確認

続いて、配管系統ごとに排水負荷単位の累計を確認していきます。

 

配管ルートは以下のように計画してみました。

分流式の指定があったので、建屋内の配管を

「汚水配管系統」と「雑排水系統」に分けています。

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【手順】 管径の算定

続いて、各区間ごとの排水負荷の累計から、

排水管の口径を選定していきます。

 

下の図のようなに系統・配管毎に負荷単位を整理していきます。 

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続いて、「建築設備設計基準 P595 表5-2、表5-3」を参照しながら配管口径を選定していきます。

 

選定した結果、以下のようになりました。

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 建物が大きくなっても、基本的にはこの手順で対応できます。

 

続いて、排水管の要ともいえる「通気管」を計画していきましょう。 

 

 

通気管の計画

手順は、排水管と同様です。

この建物の規模では、伸頂通気管は不要です。

 

【手順】 各系統の器具排水負荷単位の確認する

排水管で選定した資料を使います。

 

【手順】 各系統の汚水管又は雑排水管の管径を確認する

排水管で選定した資料を使います。

 

【手順】通気管の最長距離を算定する

通気管の長さを選定していきます。

 

【手順】通気管の口径を算定する

ここまでの情報が整理できたら口径を算定していきます。

(設備設計基準P593)の『表6-1』を参照しながら選定していきましょう。

選定の注意点!

1・通気管の最高口径は32Aとする。

  (排水槽に設ける通気管は50以上とする。)

2・伸頂通気管と結合通気管は、接続する排水管の管径と同等とする。

  それ以外の通気管の管径は接続する管径の1/2以上とする。

 

 

 

算定したものを整理すると以下の図のようになりました。

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この位の規模であれば、給水配管に比べると非常に簡単です。

練習としては、伸頂通気管も確認できるので2階建ての建物で試してみると良いと思います。

 

 

さいごに

今回は、「排水配管の実施設計 1/2(全2回)」として、

建物の「汚水配管・雑排水配管」そして「通気管」の設計方法について紹介させて頂きました。

 

次回は、同じ建物モデルで「雨水排水設備」の設計について紹介します。

 

次回もよろしくお願いします。

 

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★☆☆☆☆☆☆☆☆☆彡

最後まで閲覧頂きまして、

ありがとうございました。m(_ _)m 

 

この記事を書いた人

 

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このブログについて 建築士の挑戦 - 『建築士 ✕(かける)』

★「職人」から「建築士」へ 

   施工現場と設計現場へ そして事務所を開設した異色の経歴を持つ建築士。

2018年10月に設計事務所「 Samurai-architect(サムライ-アーキテクト)」を開設。

退職〜開業までの記録を綴った 「開業の記録シリーズ」を公開中。

実務以外のこと(主に遊び)は、 「建築士× (カケル)」にて。

 

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