断熱仕様が良いとランニングコスト(光熱費)が安くなります!!
なんて話を良く聞きますが、
実際に「どの位安くなる」という文献は多くありません。
断熱の仕様で変わる光熱費
しかし、断熱材の仕様で月々の光熱費が変化するのは紛れもない事実です。
建主に、「どのくらい光熱費変わるの??」
なんて聞かれることもあるはずです。
そこで今回は、
実際の建物での「光熱費シミュレーション」をしてみようと思います。
高断熱住宅を手がける皆様の営業トークに使用して頂けたら嬉しいです。
断熱使用別光熱費シミュレーション
シミュレーションをする物件は、次の通りです。
シミュレーション対象
シミュレーションする物件は、弊事務所が間借りしている戸建て住宅です。
構 造:木造2階建 木造枠組み工法
築 :約30年 某大手ハウスメーカー
延べ面積:約140㎡
建 設 地:茨城県笠間市
1階平面
2階平面
某大手ハウスメーカーで建設され、築30年が経つそうです。
間取り・外観共に、この時代に良くみられる住宅です。
こちらの物件を対象として、
シミュレーション1:現在の断熱仕様
シミュレーション2:現在の一般的な断熱仕様
シミュレーション3:さらに強化した断熱仕様
の3パターンでシミュレーションをしてみたいと思います。
シミュレーション1「現況の断熱仕様」
現状の断熱仕様は以下の通りです。
【断熱材】
屋根:グラスウール10K(t50mm)
壁 :グラスウール10K(t50mm)充填断熱
床 :グラスウール10K(t50mm)
【窓サッシ】
枠 :アルミ製
ガラス:3mフロート
【設備の仕様】
冷房:エアコン
暖房:灯油ファンヒーター
換気:第3種
給湯:エコキュート(改修により)
この当時は無断熱も多かったそうなので、
断熱材が入っているだけ最先端だったのかもしれません。
設備は、「夏はエアコン」「冬はファンヒーター」という
茨城ではオーソドックスな組合せです。
シミュレーション結果
下は、現況仕様で解析ソフト「建物燃費ナビ」にかけた結果です。
Q値が『4.3』と、現在の一般的な住宅の倍近くの値となりました。
特に窓、躯体からの熱の侵入が多いこと、暖房の消費エネルギーが大きいことが解ります。
続いて、光熱費をシミュレーションしてみます。
光熱費をシミュレーションしてみると、年間54万円かかっていることが解ります。
なかでも、灯油だけで「約34万円」かかる結果です。
ここに注意!
このシミュレーションで注意する点は、
このシミュレーションは、設定した温度を保った場合の光熱費です。
寒くても暖房を付けずに我慢している場合等はシミュレーションできていません。
オーナーさんに年間の光熱費を聞いてみると、だいたい40万円位だそうです。
(冬は、暖房費を抑える為に、ダウンジャケットを着込んでいるそうです。)
ここがポイント!|暖房期の熱取得
下は、「冷房負荷」「暖房負荷」と「窓からの日射取得量・熱損失」のグラフです。
ここで注目したいのは、「暖房期の窓からの日射取得量」です。
窓の熱損失は大きい!
南面では、「日射取得量」と「損失量」が同じ
他の面では、「日射取得量」よりも「損失量」が大きいことが解ります。
つまり、太陽熱の恩恵を受けていない住宅であるといえます。
シミュレーション2「今の一般的な断熱仕様」
続いて、
この物件を最近の一般的な住宅断熱仕様に変えてシミュレーションしてみます。
変更点は以下の通りです。
断熱仕様の変更点 ※太字
【断熱材】
屋根:グラスウール16K(t100mm)
壁 :グラスウール16K(t100mm)充填断熱
床 :グラスウール16K(t100mm)
【窓サッシ】
枠 :アルミ樹脂複合
ガラス:3/12/3 ペアガラス Low-E
【設備の仕様】
冷房:エアコン
暖房:灯油ファンヒーター
換気:第3種
給湯:エコキュート(改修により)
こちらでシミュレーションしてみます。
【現況】 【改修後】
窓の熱損失 :217 W/K → 97 W/K
壁の熱損失 :162 W/K → 94 W/K
屋根の熱損失: 55 W/K → 29 W/K
へ向上しているのが解ります。
続いて光熱費のシミュレーションをしてみます。
【現況】 【改修後】
543,520円 → 344,290円 (-199,230円)
となり、約20万円安くなっていることが解ります。
灯油の消費量も半分程度減りました。
10年で200万円
20年で400万円
30年で600万円
の差になりますので、断熱リフォームに効果があることが解ります。
暖房期の窓からの「日射取得量」と「損失量」ですが、
全面で、「日射取得量」よりも「損失量」が小さくなりました。
シミュレーション3「さらに断熱強化した場合」
さらに断熱仕様を強化した場合のシミュレーションをしてみます。
断熱仕様の変更点
【断熱材】
屋根:高性能グラスウール32K(t200mm)
壁 :高性能グラスウール32K(t100mm)充填断熱
+
外部付加断熱ネオマフォーム(t50)
床 :ネオマフォーム (t100mm)
【窓サッシ】
窓 :樹脂(YKKAP APW430)
【設備の仕様】
冷房:エアコン
暖房:エアコン
換気:第1種(熱交換型換気扇)
給湯:エコキュート
断熱仕様の変更に加えて、暖房をエアコンに変えて計算してみます。
【現況】 【改修後】
窓の熱損失 :217 W/K → 68 W/K
壁の熱損失 :162 W/K → 57 W/K
屋根の熱損失: 55 W/K → 13 W/K
へ向上しているのが解ります。
【現況】 【改修後】
543,520円 → 204,560円 (-338,960円)
となり、約34万円安くなりました。
10年で 340万円
20年で 680万円
30年で1,020万円
の差がでることになります。
かなりの金額です。
つづいて、暖房期の窓からの「日射取得量」と「損失量」をみてみます。
全面で、「日射取得量」よりも「損失量」がさらに小さくなりました。
断熱・窓ともにトップクラスの仕様ですので、これ以上の性能向上は難しそうです。
これ以上性能を良くしようとすると、プランから見直す必要がありあそうです。
まとめ
断熱改修(断熱リフォーム)効果があるけど、限界がある!
断熱改修は、光熱費削減に効果があることが分かりました。
しかし、一定のレベルで頭打ちになりそうです。
窓の仕様・断熱材をトップレベルにしてみたのですが、残念ながらこれ以上の性能の向上は見込めそうにありません。
光熱費をさらに安くするには、太陽熱を利用するしかないと判断できます。
やはりプランがとても重要であることがわかります。
新築工事で「耐震性能」「断熱性能」を重視する理由はここ!
断熱性能も、耐震性能と同様にリフォームでは限界があります。
(できないことは無いが、相当お金がかかる)
これが、新築工事で「耐震性能」と「断熱性能」を進める理由です。
住んでからのコストも踏まえながら計画をすると、
きっと施主に満足してもらえると思います。
是非ご検討下さい!
★☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆彡
最後まで閲覧頂きまして、
ありがとうございました。m(_ _)m
この記事を書いた人
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このブログについて 建築士の挑戦 - 『建築士 ✕(かける)』
★「職人」から「建築士」へ
施工現場と設計現場へ そして事務所を開設した異色の経歴を持つ建築士。
2018年10月に設計事務所「 Samurai-architect(サムライ-アーキテクト)」を開設。
退職〜開業までの記録を綴った 「開業の記録シリーズ」を公開中。
実務以外のこと(主に遊び)は、 「建築士× (カケル)」にて。
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