大空間を設計する時に、天井の落下防止対策に注意しましょう。
【基本Pointのおさらい】(理解されている方は飛ばして下さい)
1)天井落下防止対策が策定された背景
平成23年3月に発生した「東日本大震災」においては、
「体育館」「音楽ホール」「市役所」などの多数の建築物の天井が脱落し、甚大な被害が出ました。
連日ニュースで流れていたので、衝撃を受けた方も多いと思います。
その東日本大震災の被害を踏まえ、
天井の脱落対策に関する新たな基準が定められました。
2)天井等落下防止対策の考え方
天井等という言葉には、吊り天井の他、照明器具やスピーカー等の
高所に設置された物を含むと考え、
それらの機器類にも落下防止の対策を施す必要があります。
特定天井とは??
特定天井とされる天井は、
1・6mを超える高さ
2・面積200m2を超える
3・質量2kg/m2を超える
4・人が日常利用する場所
とされており、天井落下防止の対策を講じる必要があります。
その他、下のような天井については
設計者の判断により安全を確保するとされています。
・吊り天井以外の天井(直張天井、直固定天井など)
・人に重大な危害を与える恐れの低いもの
・人に危害を与える恐れがない場所に設置されるもの
天井脱落対策に関する技術基準の概要
- 天井の単位面積質量は20kg / m2 以下とする
- 天井材は、ねじ、ボルト等により相互に緊結する
- 吊り材は、1本 / m2 以上を釣り合い良く配置する
- 斜め部材は、V字状に算定式で必要とされている組数を釣り合い良く配置する
- 壁材との間に、6cm以上の隙間(クリアランス)を設ける
- 天井面に段差等を設けない
- 吊り長さは、3m以下とし概ね均一とする。
- 天井が外れても落下しないように安全ネットなどを張る
機器類の落下防止措置
天井機器類の取付け方の明確な規定は定められていませんが、
以下のような取付け方が一般的です。
考えられる機器
照明器具・音響機器(スピーカー等)、空調機器、警報機器、スポーツ器具(バスケットゴール等)
対応策
1)製品の取付け受け材は、原則として構造体に取り付ける。
2)後付けとする場合は、あと施行アンカーなどの十分耐力のある取付方法とする。
3)地震時に天井と一体で挙動しない機器類については、天井との間にクリアランスを設ける
4)万が一の対応として、機器類には脱落防止チェーン(もしくは控えワイヤー)等を取付ける。
5)吊り長さが長い場合は、吊ボルトに振れ止め(斜材)をXY方向に取付ける。
特定天井の適応を受けない工法
「施工上の制約」や「工期」「天井の意匠」の都合から
特定天井の適応を受けない天井を採用することも有効です。
1・吊り天井
吊り天井を2kg / m2 以下の計量なものを使用する工法です。
工法の特徴
- 吊り材、下地材の設計、施工が用意
- 天井形状の 自由度はあるが、天井素材が限定される
- 天井材はグラスウールボード、発泡樹脂ボード等の計量な仕上げ材となるので、天井材が落下しても、人的被害の生じる可能性は低く、耐衝撃性も低い。
2・直張天井
吊り天井とならないため、特定天井の適応を受けない工法です。
工法の特徴
- 天井形状が躯体形状により制約される
- 天井ふところが無いため、設備機器の取り付け、配管・配線など、制約がある。
- 躯体(スラブ)に直接下地と天井材を取付けることから、地震時の変位がなく、破損、落下の可能性が少ない。
- 吊り天井に比べ、工期とコストを抑えられる
3・直固定工法
構成下地で構成し準構造部材とする工法。吊り天井とならないため、特定天井の適応を受けない工法
工法の特徴
様々な形状、意匠に対応することが可能で設備機器・方式などの制約が少ない。
★☆☆☆☆☆☆☆☆☆彡
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この記事を書いた人
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このブログについて 建築士の挑戦 - 『建築士 ✕(かける)』
★「職人」から「建築士」へ
施工現場と設計現場へ そして事務所を開設した異色の経歴を持つ建築士。
2018年10月に設計事務所「 Samurai-architect(サムライ-アーキテクト)」を開設。
退職〜開業までの記録を綴った 「開業の記録シリーズ」を公開中。
実務以外のこと(主に遊び)は、 「建築士× (カケル)」にて。
ブログ記事の更新はsamurai architectの「 Facebookページ」にてお知らせしています。
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