換気設備「換気回数・風量を決める方法!!」
今回は、換気回数・風量を求める方法を紹介させて頂きます。
換気回数の設定とは?
換気回数とは、
1時間に何回部屋の体積分の空気を室内に入れるか?
という意味です。
「100m3の部屋」に「300m3の空気」を入れ替えると
換気回数は3回となります。
換気は、建物に重要な設備の一つです。
「換気設備はどのように設定すれば良い?」
「どの程度の風量の器具を選べば良いか?」
換気設備の設定で悩む設計者は少なくありません。
今回は、換気回数・風量を求める方法を紹介させて頂きます。
- 換気設備「換気回数・風量を決める方法!!」
- 換気回数(換気量)を決定するポイント
- 目的別換気量の求め方(建築設備設計基準より)
- 実際に計算してみよう!
- 居室系の計算手順(事務室・会議室)
- 非居室系の計算手順(トイレ・更衣室)
- さいごに
建築設備設計基準 P.452〜
換気回数(換気量)を決定するポイント
換気回数(換気量)を決定するポイントは、
ズバリ部屋の用途・目的です。
まずは、換気に関する基礎知識を理解する必要があります。
【基礎知識】そもそも換気とは?(既に理解されている方は飛ばして下さい。)
換気には、
「室内空気の浄化」「酸素の供給」「水蒸気・臭気・危険ガス・有毒ガスの除去」などの目的があります。
そして、換気方式が「第1種」「第2種」「第3種」とあり、
それぞれの方式の特徴を理解することが重要です。
建築基準法による制約(シックハウス対策)
平成15年7月1日より、シックハウス対策に係る改正建築基準法が施工され機械換気設備の設置が義務付けられました。
これは、住宅全体の化学物質濃度を低下させるための対策で
「全般換気」「機械換気」「連続運転」とする必要があります。
いわゆる『24時間換気』です。
居室には、24時間換気が義務付けられています。
つづいて、部屋の用途(目的別)の必要換気量選定方法を見ていきます。
目的別換気量の求め方(建築設備設計基準より)
【1】必要換気量(シックハウス対策の換気量を求める場合)
建築基準法で定められた24時間運転の換気量です。
居室系の部屋に義務付けられています。
必要換気量(㎥/h)÷ 部屋の体積 ≧ 0.3 (非住宅)
≧ 0.5 (住 宅)
24時間換気量が「非住宅系」であれば0.3以上、「住宅系」であれば0.5以上必要となります。
【2】必要換気量(1人当たりの占有面積から求める場合)
必要換気量(㎥/h)=20 × 居室の床面積(㎡)÷
1人当たりの占有面積(㎡)
居室の必要換気量の目安【HASS102換気案より】
建物、室名 在室密度 必要換気量
(平米/h) (㎡/(h/㎡)
住宅・アパート 3.3 9.0
事務室(一般) 4.2 7.2
ホテル客室 10.0 3.0
劇場・映画館 0.6 50.0
事務室や居室は、
「【1】と【2】の計算式によって求めた風量、
とを見比べて総合的に換気風量を選定します。
プチPoint 以外に大きい換気による空調負荷
換気量が大きい方が、室内空気は新鮮に保てるのですが、
換気量が増えることで、空調負荷が増えるので、
適切な風量選定が必要です。
【3】必要換気量(室の必要換気回数から求める方法)
トイレや更衣室ロッカー、浴室など
居室以外の使用頻度が少ない部屋や水周りの換気量を計算するのに使用します。
各室(居室以外)の換気量の目安(建築設備設計基準より)
トイレ・洗面所 5〜15回/h
ロッカー室・更衣室 5回/h
書庫・倉庫・物品室 5回/h
暗室 10回/h
コピー室・印刷室 10回/h
映写室 10回/h
配膳室 8回/h
シャワー室 5回/h
浴室 5回/h
脱衣室 5回/h
食品庫 5回/h
【4】必要換気量(汚染濃度から求める場合)
一般に1時間当たりの空気の体積(㎥/h)で表示します。
空気環境を良好な状態に保つために必要とされる最小限の取入外気量を必要換気量といいます。
必要換気量(㎥/h)=汚染物質発生量(㎥/h)÷
(許容汚染物質濃度ー外気汚染濃度)
必要換気量は上記の式で計算できます。
【5】必要換気量(理論廃ガス量により求める方法)
厨房などに用いる計算式です。
「廃ガス量やガスの種類」「フードの形状」によって必要換気量を求めます。
火を使用する室等の換気設備(燃焼器具から求める方法)
V = 定数 × K × Q
V:必要換気量(㎥/h)
K:燃料の単位燃料当たりの理論廃ガス量
Q:単位時間当たりの燃料消費量
定数:換気方法により選定
【40=排気フードが無い場合(開放式燃焼器具)】
【30=排気フードI型の場合(レンジフードファン等)】
【20=排気フードⅡ型の場合】
【 2=マフラー・煙突使用の場合】
理論廃ガス量(K)
都市ガス 13A 0.93 ㎥/kW・h
都市ガス 6B 0.93 ㎥/kW・h
LPガス(プロパン) 0.93 ㎥/kW・h
灯 油 12.1 ㎥/kW・h
実際に計算してみよう!
計算のサンプル:事務所
それでは、実際に換気量の計算をやってみましょう。
今回は計算例として、事務所の計算をしてみます。
計算式は「EXCEL」で行うと簡単ですし、
一度計算式を作ればずっと使えるので楽です。
↓ 事務所版 換気計算表のサンプルです。
★ダウンロードはこちらから 『計算表・各種様式 『ダウンロードページ』
居室系の計算手順(事務室・会議室)
居室系の場合、
「建築基準法で定められた換気回数」と「部屋の換気回数」の
バランスをとりながら風量を決定するのがポイントです。
【手順1】 部屋の面積と体積を計算します。
【手順2】 部屋に在室する人員数を計算します。
人員が決まっている場合は、実人員数を入力します。
分からない場合は、部屋の用途で決まっている想定人員数
を入力します。
POINT
特殊建築物の居室の場合、「3」を超える時は「3」
その他の居室は「10」を超える時は「10」とします。
【手順3】 前項【2】20条の4の計算をします。
【手順4】 シックハウス対策の「0.3回 / h」を満たす
換気量を計算します。
今回は「非住宅」なので「0.3」です。
【手順5】 (手順3)と(手順4)で求めた換気量それぞれを満たす
数値を設計換気量として設定します。
【手順6】 設計換気量を満たす換気機器を選んで完了です。
非居室系の計算手順(トイレ・更衣室)
非居室系は、
部屋の換気回数を目安に風量を求めますので、居室系よりも工程が減ります。
【手順1】 部屋の面積と体積を計算します。
【手順2】 常時多くの人が利用する場合は、部屋の人員数を
計算します。
(常時人がいない一般的な用途の場合、人員計算は不要です。)
【手順3】 前項【3】の換気量の目安をもとに、部屋の換気量を
設定します。
トイレの場合:5~15回なので、最小の「5」
更衣室の場合:「5」
ここで求めた数値を設計換気量として設定します。
【手順4】 設計換気量を満たす換気機器を選んで完了です。
トイレや更衣室以外にも、機械室や倉庫も考え方は同じです。
さいごに
今回紹介した計算が、換気風量を求める基本です。
用途に応じて数値を調整すればある程度の建物であれば応用が可能です。
一番のポイントは、適切な風量を設定することです。
設計風量が少なければ換気の役割を満たさないし、
多すぎれば空調の負荷を増大させます。
まずは、竣工した物件の換気計算をやってみることをオススメします。
換気量の感覚を掴んで頂ければ嬉しいです。
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ありがとうございました。m(_ _)m
この記事を書いた人
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このブログについて 建築士の挑戦 - 『建築士 ✕(かける)』
★「職人」から「建築士」へ
施工現場と設計現場へ そして事務所を開設した異色の経歴を持つ建築士。
2018年10月に設計事務所「 Samurai-architect(サムライ-アーキテクト)」を開設。
退職〜開業までの記録を綴った 「開業の記録シリーズ」を公開中。
実務以外のこと(主に遊び)は、 「建築士× (カケル)」にて。
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